株式会社サン・クレア ホテル観光業 福山市

株式会社サン・クレア

「単に寝泊りするだけではないホテル創り」に挑戦している会社が広島県にあります。現在、瀬戸内エリアで7棟のホテルを運営する株式会社サン・クレア。広島県福山市にある「福山オリエンタルホテル」と愛媛県宇和島市にある「宇和島オリエンタルホテル」2ホテルの運営から始まり、新型コロナウイルスが流行する中で、現在7ホテルの運営にまで拡大しています。ホテル業界含めたサービス業界は、以前から不定休であったり、他業界と比較すると低給与であることが課題として挙げられ、採用が苦戦している中、今回は株式会社サン・クレアで、10年以上ご活躍されている広報の東さんに、新型コロナウイルスが流行する中での困難や、大切にしている価値観、そしてホテル業界全体の課題をお聞きしました。

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東さんのご経歴

東さんは入社当初、現場スタッフとして経験を積み、その後、広報に異動。現在は、株式会社サン・クレアが運営する各ホテルの新しい取り組みの発信や、宿泊プラン・イベント企画業務に取り組まれています。より詳しい東さんのご経歴や業務内容は下記リンクからご覧頂けます。
入社17年目・広報の東さんに聞く!サン・クレアの過去と現在とは | 株式会社 サン・クレア (wantedly.com)

コロナ流行中での拡大期を経て

栗田:
新型コロナウイルスが流行する中で、ホテルの拡大期を迎えられていますが、コロナ流行で感じたことや困難だったことを教えてください。

東さん:
コロナが始まった時、そして深刻な状況の時は、当然私たちも大変でした。国内はもちろん、海外からもたくさんに日本に来られていた中で、より日本の魅力を伝えていきたい!気持ちの中でホテルを開業した矢先に、全てのホテル休業の判断をしました。休業をするとどうなるのか、答えはシンプルで「売上がゼロ」になりました。その状況でも従業員の皆さんの雇用を守る動きも必要でした。経営陣中心にここでは書けないくらいの苦労がありました苦笑

ただコロナがどういったものが少しずつ国内、そして世界が分かってきたときに、本当にちょっとずつですが、お客様が戻ってきて、私たちがご提供したいサービスや価値を守ることができ、結果的に「研ぎ澄ますことができた」時間だったと振返ります。

大切にされている価値観

栗田:
大切にされている価値観を教えてください。

東さん:
「無機質なホテル創り」をしているわけではないので、お客様と直接会話することはとても大事にしています。広島県福山市の「ANCHOR HOTEL FUKUYAMA 」は、地域コミュニティの拠点として「人」と「人」とを繋ぎたい、という想いで運営をしています。だからこそ本当は、コンシェルジュ機能を置いてお客様と会話したいんです。今は、業法の兼ね合いや、スタッフの人数の問題で、実現できていないんですけど。「今日どこに行ったんですか?そこに行くんだったらあそこもいいですよ!」「デニムで作られた館内用ルームウェアは、実は福山の工場で〜」みたいな。人の言葉で語りかけることで人の心に入っていくと思っていて、そうすると伝わった人は、他の人にまた伝えたくなるじゃないですか。そういう流れを作りたいんです。でも、今それができていない部分があるので、「ANCHOR HOTEL FUKUYAMA」として本来の役割を果たせているのかずっとモヤモヤしています。

アンカーホテル福山:ANCHOR HOTEL FUKUYAMA |アンカーホテル福山 (anchor-hotel.jp)

栗田:
そこまで、お客様との直接の会話にこだわられている理由を伺えますでしょうか?福山の産業や魅力を伝える方法として、例えば壁にQRコード貼っておいて、読み込んだら福山のデニムの歴史が出る、みたいな方法もあると思うんですけど…

東さん:
方法としてはあるかもしれませんが、あんまり響かなくないですか?^^ やっぱり人から直接聞くって、結構力があることだなと思っていて。誰かがすごく楽しそうに、嬉しそうに話してくれたら、その人の温度感が伝わって「え、そうなの!」って共感するじゃないですか。それで初めて興味を持ってもらえるかなっていうのもあるし、その方が興味持ってそうなことに対して、ちゃんと答えを返してあげたいんです。でも、1番は私自身がお客様と会話をしたいんだと思います。

栗田:
東さんは現在広報がメインになると思うのですが、東さんご自身がフロントに立ってお客様とお話をされたいですか?

東さん:
広報をしたい気持ちもあるので、1日中ずっとは難しいけど「1日のうち半分ぐらい現場に出て、フロント業務ね」みたいなのは全然ウェルカムです!

栗田:
そこはやっぱり人を喜ばすとか、ホテルに愛着があるっていう、東さんのとびきりの想いなんですかね。

東さん:
それもあるし、やっぱりホテルの接客なんか好きなんですよね。ホテルはお客様の滞在時間が長く、おのずとタッチポイントが多くなるので踏み込みやすいというか。あと、この街が好きなので、福山の観光についてならいくらでも会話できるくらい引き出しに自信があるんですよ。だから、やれるって思ってるし、やりたいと思ってるのかも。

栗田:
それはサン・クレアさんが運営されている全てのホテルに通ずるところですよね。 当然お客様の要望は違いますが、もう聞かれたらそりゃ待ってました!と言わんばかりに。

東さん:
ほんとにそう思います。広島県広島市の「NAGI Hiroshima Hotel & Lounge」「LAZULI Hiroshima Hotel & Lounge」愛媛県松野町の「水際のロッジ」はもう本当にそんな気持ちじゃないかなと。彼らは当たり前に、高水準な接客をしているんですよ。特にそこが取り上げられることはないんですけど、本当に評価すべきことですよね。だから、本当に接客が好きな人が、「接客を頑張りたい」とジョインしてくださったなら、それをできるステージはあると思います。

NAGI Hiroshima Hotel & Lounge:
NAGI Hiroshima Hotel & Lounge・LAZULI Hiroshima Hotel & Lounge (nagi-lazuli.com)

栗田:
その接客はクチコミにも表れていますよね。
四万十川源流 森の国 水際のロッジ bookingページ
NAGI Hiroshima Hotel & Lounge bookingページ

東さん:
ブッキングドットコムの評点は他のOTAと比較しても、ごまかしがききづらいと言われているんですけど、NAGIやLAZULIは平気で9点台を取っているんです。 (2023年10月13日時点)他のホテルも高水準を取っています。評点の傾向として、お値段が安いホテルはコスパが良いっていう言いかえもできるので、お値段が高いホテルはお客様の評価が厳しくなりがちなのですが「水際のロッジ」はお値段を安く出しているわけではないのに評点が高いっていうのはありがたいことですよね。それだけ、確かなものを提供しているってことだと思います。

栗田:
愛媛県の「水際のロッジ」については週末稼働のみにしているってお聞きしたんですけど、ホテル業界として珍しいと感じました。他にサン・クレアさんがやめた業界の通常ルールってありますか?

東さん:
そうですね。もう1つ挙げるとすれば、マーケットに振り回されるような売り方はしてないことですかね。エリアの中で高見えしないよう、他のホテルの料金に馴染ませながら少しだけ料金を安くして、予約をいっぱい取ろうとするホテルが多いんですけど、うちは先に料金を上げたりしているので、料金のコントロールも結構強気だと思います。自分たちのホテルにプライドを持って、自分たちが決めた価格で出しています。

ホテル業界の採用課題

栗田:
ホテル業界の採用について伺いたいです。ややルーティン業務になりやすいイメージなのですが、ホテル業界だからこそ身に着けることができるスキルはあるのでしょうか?

東さん:
昔はそんなに思わなかったんですけど、ルーティンワークが多いかも、特殊なスキルを身に着けることが難しいかも…と、最近は思うようになりました。以前は、うちに来た人はうちを辞めた後もホテルマンとして生きていく人が結構多かったんです。ホテルを渡り歩くんですよ。だけど、最近はホテルを渡り歩いてる人ってあんまり見なくって。 ホテルのあと、どこかでスキルアップしていろんな経験を積んで自分を作っていく人が多いです。特に若い人は個の力みたいなのを結構求めるじゃないですか。「それで食べていけるようなスキルを身につけたい」「何か特殊な能力を持ちたい」みたいな。ホテルはそういうスキルは非常に身につけづらいかもしれないと思っています。

栗田:
いわゆるゲストサービスは当然スキルとして出てくると思うんですけど、ホテルでそれ以外の広報やOTAのスキルを身に着けようと思うと、そこのポジションにたどり着く人ってほぼいないので、難しいですよね。

東さん:
そうですね。よっぽどですよ。本当にひとつまみの中の一つまみぐらいの、針の穴を通すぐらいの人が 「#接客が好き」とか「#おもてなし」とかがやっと書けるレベルで。でも、ホテルならではの接客って、結構努力しないと身につかないですよね。しかも一朝一夕に身につくものでもないじゃないですか。カリスマみたいな人が社内にいれば背中を見て学ぶこともできるんですけど、なかなかそれも難しいですよね。

栗田:
接客スキル以外に、ホテルで働くことで得られるものって何だと思いますか?

東さん:
地域に根差すみたいなところは、ホテルは必ず持っていると思うので、観光に携わる方との繋がりは得ることができますよね。「地方を盛り上げたい」みたいなのがあれば、その手段がいっぱいあるっていうことは身近に感じることができると思います。で、その中でよりその世界を見ることはできる。もちろん、そのままホテルを極めるのもありだろうし、ツアー会社さんとか、それにまつわるDXの会社とか、そういった選択肢を知ることはできます。後、サン・クレアで言うと、藍染めとか、キャンプとか、農業とか、 自分がしたいことを直接的にできるっていう利点はあるかもしれないですね。ただ、大手チェーンのホテルって言われると、もう本当にルーティーンの接客が1番 大きいのかなあと。その中でスキルタグを見つけるって、 よっぽどやりたいことがないと難しいのかなとは思います。

栗田:
まずは現場から入って、ゆくゆくは広報とか企画とか人事とかに移動できるようなキャリアプランを出していると思うんですけど、実際そこのポジションに行くのって難しくないですか?またどうしてもシフト制ですので、中長期にわたりホテル現場でご活躍することは難しいのでしょうか?

東さん:
それはあります。私が働きはじめの頃って、女性が生涯仕事すると思ってなかったんですよ。大学出て、ちょっと働いて、結婚したらもうあとパートでいいからね~みたいな。要はそれで生活が成り立ってたんですよね。 だけど今、私の周りを見渡すと、結婚、出産後もなんだかんだで、しっかりと働かれている女性が多いです。その辺の価値観が変わった中、ライフステージに合わせてずっとホテルの接客ができるのかって言われたら、よっぽどの制度がないと難しいんじゃない?と、正直思います。

栗田:
会社としては何年ぐらい勤めてくれたらいいんですか?

東さん:
具体的に何年というのはありません。大前提として、ご本人が自分の人生において、やりたいことを見つけてくれたらいいなぁと思っています。ただ、正直なところを言うと、半年、1年で退職されてしまうと、会社としては少ししんどいですね。職歴の長さが習熟度に比例して、おもてなしの質が高まることが多いので。

栗田:
僕自身、今後「まずは現場で経験積んで、ゆくゆくは広報・人事に」っていう流れの求人は破綻するんじゃないかなと思っているんです。これからは求人を2つに分けるべきなんじゃないかと。1つ目は接客が好きで、目の前のお客様に対してサービスをするってことは楽しくって喜びを感じるけれども、変化を求められたら困るっていう方に振った求人。2つ目は募集人数は少なくなってしまうけど、現場もちょっと経験して、半年くらい経ったら広報だったり人事、企画、をバンバンやっていく、その代わり変化しか求めないよ。っていう求人に分けた方がいいと思うんです。

東さん:
本当におっしゃる通りだと思います。皆そんなに待てないんですよ、昔みたいに。コロナがあったこともあって、今状況ってコロコロ変わってるじゃないですか。1年後どうなっていくなんて読めないですからね。皆今やりたいことを今やりたいんですよ。だけど、会社としては、それをちょっと収めて半年間頑張って欲しいっていうこともあるじゃないですか。やっぱりその間に、やりたいことへの熱が冷めちゃうと思うんです。やりたいことをやりたいときにやってもらうのが両者にとって一番良いと思います。

ホテル業界全体の課題

栗田:
ホテル業界が長い東さんからみて、他にホテル業界の課題や変えていきたいところって何かありますか?

東さん:
業界全体の課題としては給与ですかね。ホテル業って給与水準低いんですよね。今、求職者さんが色々な業種から選べる中で、給与が安くてもいいからホテルで働きたいって思う人はよっぽどホテルが好きな人だと思います。だから、一度、給与の相場感を業界外の人が客観的に見た方が良いかもしれないですね。

栗田:
ホテル業界のお給料が低い原因は、利益率になるのでしょうか?

東さん:
それもあると思います。ホテルはなかなか客室料金を上げにくい傾向にあったことに加えて、今はエネルギーや資材などのコストが上がってますからね。

課題に対するサン・クレアの挑戦

栗田:
ホテル業界の課題に対して、何かサン・クレアさんが取り組まれていることや、これから取り組みたいことがあれば教えてください。

東さん:
これは広島県ではないんですが、愛媛県で運営している「水際のロッジ」では「ホテル×○○」っていうような、新しい挑戦をしていたり、スタッフ個人のやりがいだったりやりたいことを尊重して、形にするっていうことに注力しています。例えば藍染だったり、キャンプだったり、自分がしたいことが自分の生業にできる。それに対して見合った給与をお支払しているような感じですかね。でも、これらの取り組みだけで課題を解決したわけではないと思っています。まだ、不定休であったり、他産業と比較をすると給与に対して課題があるのも事実なので、私たちも試行錯誤しながら「もっと給与を上げるためにはどうしたらよいのか」「従業員がキャリアを諦めることなくホテル業界で経験を積むためにはどうすればよいか」について考え続けたいと思っています。

水際のロッジ:水際のロッジ | 四万十川源流、森の国 (morino-kuni.com)

最後に

栗田:
東さんはなぜサン・クレアさんでお仕事をされているのですか?

東さん:
それはね、私もよく考えるんですけど、常に変化しているからですかね…!1つ変化が起きて、それを乗り越えたときにちょっと成長している気がするんですよね。そしたらまた間髪入れずに次の変化が来るじゃないですか。だから、自分ができることが増えているっていう感覚は日々あります。でも、たまたまそういう場にいさせてもらってるから、そう思える立場なのであって。 こういう経験を他のスタッフとも分かち合えたらいいでしょうね。やっぱり、そこは会社として課題ですね。例えば、フランとスタッフには、フロントの仕事ばっかりしてもらってるっていうのは、こっちの甘えかもしれないですし。 やっぱり成長の機会を会社としては用意してあげないと、そりゃスタッフも飽きるよっていう。

栗田:
最後に次世代のために一言お願いします!

東さん:
会社に対して不満がある時には、主張してほしいですね。思うことがあるんだったら言えばいいと思うんですよね。そこから一緒に考えられたらいいのにっていうのは思いますね。結構みんな諦めて黙って転職活動して、不満をオブラードに包んで静かに辞めていくんですよ。でも、それをちゃんと言ってもらわないと、うちも変わっていけないし。うちは常に変わってる会社なので、そういうのは全然ウェルカムです。

求人について

株式会社サン・クレア様では、広島県内・全国で広く求人を募集しております。

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アトモニメンバーからの一言

  • 栗田 康二のプロフィール画像

    栗田 康二

    株式会社アトモニ|代表取締役

    テクノロジー発達の中でも大切にするヒトへの想い

    コロナがあって本当に大変だったホテル業界。その業界で10年以上活躍されている東さんのお話はリアリティがあり、情熱があり、ひきこまれました。テクノロジーが発達する一方で「ヒトの想い」を大切にホテル事業に挑戦、新しい働き方にも挑戦をされているサン・クレア様。給与、休み、キャリアなどの業界課題にも逃げずに取り組まれていること、本当に尊敬です。ホテル観光業、サービス業、地方創生に興味がある方はぜひサン・クレア様の情報をチェックされてみてください!

  • 山下 遥のプロフィール画像

    山下 遥

    株式会社アトモニ|インターン

    ホテル業界の課題に真正面から取り組む

    株式会社サン・クレアさんはホテル業界の課題を真正面から受け止め、葛藤しながらも課題解決に向けて試行錯誤されている姿がとても印象的でした。そして、「単に寝泊りするだけではないホテル創り」に取り組まれ、新たなホテルの形を築き上げているように、会社と従業員の方々の関係性も新しく、素敵です。「従業員が自分の好きなことを生業にできるように」と会社に携わってくれている人々が幸せに生きていけるように、会社側が工夫している。従業員が会社に合わせるのではなく、会社が従業員の人生を見守っているような関係性が垣間見えました。